けやきひふ科の日記

富山県砺波市にあるけやきひふ科です。皮膚の話題、治療の話題、学会で得た知識など、掲載しています。

天然保湿因子 Natural Moisturrizing Factor (NMF) とは

天然保湿因子とは?

 皮膚の細胞は角化という変化を起こします。その際に、ケラチンというたんぱく質が集合してケラトヒアリン顆粒というものを形成します。ケラトヒアリン顆粒には、ケラチンだけではなく、プロィラグリンという物質が含まれていて、角化する際にフィラグリンという物質に変化します。このフィラグリンがとても重要で、さらに変化して、アミノ酸に分解され、天然保湿因子となるわけです。

 うまれつき、フィラグリンの産生が低下している人たちが存在し、そのような状態の人は、天然保湿因子をうまく産生できないのです。

 2006年に、英国人でフィラグリンの異常があると、アトピー性皮膚炎発症する可能性があることが示されました。フィラグリンをつくる遺伝子変異がある人たちでは、皮膚のバリア機能異常があり、アトピー性皮膚炎をおこしやすくなるというのです。

 報告された当時、皮膚科医の間で瞬く間に知れ渡った情報でした。日本人でも、遺伝的にフィラグリン産生に問題がある人たちが存在し、魚鱗癬という乾燥しやすい皮膚の病気と関連があることが、証明されています。

 つまり天然保湿因子がない(うまくつくられない)と、皮膚のバリア機能が弱くなり、皮膚の健康を維持しにくくなることが、わかっています。

 もともと皮膚に備わっている成分ですが、何度も洗ったり、激しくこすると天然保湿因子も奪われてしまいます。これから、暖房がはいり、乾燥しやすくなってきますが、洗いすぎ、こすりすぎは、厳禁です。